2020年12月13日

愛する皆さま

主の御名を心よりほめたたえます。

 

私が生まれ育った韓国では、若いカップルの間にある暗黙のルールがあります。それは男性が軍隊での話をしてはいけないということです。ほとんどの女性は軍隊経験がありませんが、父親や兄弟からさんざん聞かされているはずなので、絶対に話題にしてはいけません。幸い私は、妻が軍隊の話を聞いたことのない日本人なので、話せば興味深く聞いてくれました。今も時々話しますが、さすがに15年も聞くと飽きてきたのか、途中で話題をうまく変えたり、急に用事を思い出したりします。

 

今日は妻にも話していないことを話したいと思います。私は「偵察隊」という特殊部隊に勤務していました。敵地に忍び込み敵の位置や動きなどを本部に報告する任務です。ある日、私が属していたチームが仮想の敵になり、ある部隊に忍び込んで隊長を暗殺するという設定の訓練が行われました。訓練とはいえ本気です。相手の部隊はどうにかして私たちの作戦を防がないといけませんし、私たちも全力で敵地に潜入しなければなりません。しかし事前に知らせてから始まるので、明らかに私たちには不利な条件でした。

しかし私たちにはある武器がありました。それは忍耐強さです。このような訓練の場合は、まず近くで静かに時間がたつのを待ちます。朝方の3時や4時ごろは眠気がピークになり、「もう来ないだろう」と思いウトウトして無防備になります。ちょうどその時に動くのです。居眠りしている見張り兵の顔に落書きをするという大胆な行動をしたこともあります。

その日の夕方も私は、任された地点で朝4時まで待つつもりで1人で身を隠しました。すべて完璧です。眠らないようコーヒーもたくさん飲んだし、顔も真っ黒に塗ったので敵には見つからないでしょう。秋口だったので夜になるとだんだん寒くなってきました。用意していた服を着て体を温めると眠気が襲ってきたので、少しだけ休むことにしました。こういう時は少しだけ休むのが効果的なのです。しかし気づいたら朝でした。しまったと思って戻ると、訓練中に兵士が1人行方不明なったと大騒ぎになっていました。今は笑いながら書いていますが、その時は遠くに逃げて一生隠れていたいと思うほど恥ずかしかったのを覚えています。ウトウトするのは敵だけではなかったのです。

 

ところが、花婿の来るのが遅れたので、皆眠気がさして眠り込んでしまった。真夜中に『花婿だ。迎えに出なさい』と叫ぶ声がした。そこで、おとめたちは皆起きて、それぞれのともし火を整えた。愚かなおとめたちは、賢いおとめたちに言った。『油を分けてください。わたしたちのともし火は消えそうです。』賢いおとめたちは答えた。『分けてあげるほどはありません。それより、店に行って、自分の分を買って来なさい。』愚かなおとめたちが買いに行っている間に、花婿が到着して、用意のできている五人は、花婿と一緒に婚宴の席に入り、戸が閉められた。

(マタイによる福音書25:5~10)

 

在主

林 尚俊

 

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