2021年02月28日

愛する皆さま

主の御名を心よりほめたたえます。

 

「幸せなリンゴの木」という韓国の大人のための絵本があります。実話をもとにしたエピソードが描かれた絵本ですが、今日はその中の一つのエピソードを紹介しましょう。

 

お母さんと二人で暮らしているある青年がいました。決して豊かな生活ではありませんでしたが、自分なりに人生の計画を立て、まじめに生活していました。ところがある日、彼は仕事中に交通事故に遭い両目の視力を失ってしまったのです。青年は希望を失い人生の計画もなくなったと思い、毎日悲しみと絶望の中で嘆くようになりました。

 

ところがある日、ほぼ完璧にマッチする角膜を寄贈してくれるドナーが現れたという良い知らせが彼のところに届いたのです。その角膜を移植すれば見えるようになるというお医者さんの話を聞いて、彼は再び希望を持ちました。しかしその角膜は、どういうわけか片方しか確保することができないそうです。「手術したとしても片目は見えないままだ。障害者として一生、生きないといけない。何の意味もない」。彼は否定的になってつぶやきました。しかしここまで完璧にマッチするドナーが現れるのは難しいという病院側のアドバイスを受け、しかたなく片方の目だけでも手術することを決めました。

 

手術は成功しました。そしていよいよ目を覆っていた包帯を外す日。彼がそっと目を開けると、そこにお母さんがいました。その瞬間、彼は息をのみました。お母さんの片目に包帯が巻かれていたのです。「ごめんね。両方ともあなたにあげたかったけど、そうすると両目が見えない私が、あなたに迷惑をかけると思ったの。ごめんね」。お母さんはただただ彼に謝るだけでした。

 

先週の水曜日からレントが始まりました。レントの期間は神の十字架の愛を黙想する期間です。その十字架の愛は、私たちへの愛です。その愛のゆえに、神はご自分の一番大切な独り子を私たちに与えてくださったのです。その神の愛が、今日も私たちを生かしてくださいます。ですからレントの期間は、悲しみと苦しみだけの期間ではなく、感謝と喜びをもって過ごすべき期間でもあります。

 

『神は、独り子を世にお遣わしになりました。その方によって、わたしたちが生きるようになるためです。ここに、神の愛がわたしたちの内に示されました。わたしたちが神を愛したのではなく、神がわたしたちを愛して、わたしたちの罪を償ういけにえとして、御子をお遣わしになりました。ここに愛があります』(ヨハネの手紙一 4:9~10)

 

在主

林 尚俊

 

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