2021年05月30日

愛する皆さま

主の御名を心よりほめたたえます。

 

私たち夫婦がカナダに住んでいた時、バンクーバー島の太平洋側にあるトフィーノという小さな港町に行ったことがあります。当時住んでいたビクトリアという都市からトフィーノまでは車で約6時間かかりました。長時間の運転は疲れるだろうと思いましたが、道中に出会った膨大な大自然の美しさのおかげで、疲れることなく楽しく旅をすることができました。

 

カナダの最西端にあるバンクーバー島は広い原生林があることで有名です。九州の広さと同じくらいの島のほぼ全体が原生林です。ですので高速道路を走っていくとたくさんの原生林が現れます。一部は国立公園としてある程度整備されていて、一般の人が歩けるハイキングコースもありますが、ほとんどがまだ人間が入ったことのない原生林だということです。中でもレインフォレスト・トレールと呼ばれる長いハイキングコースはとても有名です。一面コケで覆われた美しい温帯雨林の中に高さ約90メートルを超える木々があり、樹齢数百年以上の木もたくさんありました。その中に「マザーツリー」と呼ばれる木があります。私は初めて木を見て感動の涙を流しました。何人も隠れることができるほどの巨大さもそうですが、私が本当に感動したのは、その木の役割を知ってからです。「母なる木」とも訳せる何本かの「マザーツリー」によってレインフォレストの原生林が始まったとも言われています。森の中の木は何らかの形で「母なる木」につながっているのだそうです。「母なる木」は冬の雨季にたくさんの水分と養分を吸い上げて蓄えます。そして厳しい乾季である夏になると、水分や栄養分を流して森全体を潤し、森を養うのです。特にこの地域は夏には約3カ月間一度も雨が降らない場合もありますので、まさに森の母としての大事な役割をしています。

 

この話を聞いて私は、詩編1編の「流れのほとりに植えられた木」についてのみ言葉を思い出しました。主は「流れ」で、私たちはその「ほとりに植えられた木」であるという素晴らしい例えを歌ったこの詩編は、私たちが主のそばにいると主の愛と恵みによって潤され満たされると教えています。人生において、私たちがどこにつながっているのかはとても大切なことです。人生が平坦な時には、どこにつながっていても何の問題もなさそうに思えますが、人生に厳しい乾季が訪れると、つながっている先によって結果が全く異なります。「流れのほとりに植えられた木」は、どんなに厳しい乾季でも決して渇くことなく無事に厳しい乾季を乗り越えることができるのです。

 

緊急事態宣言が延長されました。私たちは今、コロナという乾季の中に置かれている森のような状況です。このような時こそ、母なる木である主にしっかりとつながって、厳しい乾季を乗り越えましょう。

 

『いかに幸いなことか……主の教えを愛しその教えを昼も夜も口ずさむ人。その人は流れのほとりに植えられた木。ときが巡り来れば実を結び葉もしおれることがない。その人のすることはすべて、繁栄をもたらす。』(詩編1: 1~3)

 

在主 林 尚俊

 

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