2021年11月28日

愛する皆さま

主の御名を心よりほめたたえます。

先週の金曜日は140年ぶりの晩秋の天体ショーが見られるということで日本中が大騒ぎでした。月の一部が地球の影に入る部分月食が各地でも観測されました。今回の月食は満月のおよそ98%が欠ける「ほぼ皆既月食」という、とっても珍しい月食だったそうです。

 

さて天文ショーの熱狂的なファンとして一足早く月食に関する情報を入手した私は、その週のすべてのスケジュールを金曜日の夜6時に合わせました。いよいよD-Dayの金曜日、月食のピークの時間である午後6時に間に合うように日課を早めに終わらせ、牧師館に到着した時間が午後5時45分、すべてが順調でした。ベランダに直行して夜空を見あげました。天気は予報通りに晴れ! 思わず「ハレルヤ!」と叫んでしまいました。「昔アブラハムも夜、こうやって夜空を見上げながら喜んだだろう」と思いながら部屋に戻り、着替え、旧約の時代の祭司たちが大切な儀式の前にやったように、丁寧に手を洗いました。

 

一連の清めの儀式(?)が終わると時刻はちょうど6時でした。方角は東! ドキドキしながら東を見ました。しかし東の空は真っ暗で何も見えません。嫌な予感がしましたがパニクらず冷静に考えました。そう言えば去年、流星群を観察した時、妻がスマホアプリで方角を正確に特定した記憶がよみがえりました。そうだ。文明の利器を利用しよう! さっそく妻に助けを求めると妻はいそいそとスマホを持ち出し天体アプリを起動させました。するとアプリが教えた方角は私が見ていたのと大分異なっています。アプリによるとほぼ真正面のちょっと低い位置に「月」と表示されていたのです。しかし牧師館のある3階からは建物しか見えません。きっと月は建物の影にあるのだろうという結論になってしまいました。淀川に走っていっても間に合わないと判断したので諦めるしかありませんでした。

 

140年ぶりの大天体ショーをテレビで見るしかないなんて……。本当に本当にがっかりした気持ちでテレビをつけると、全国各地の「ほぼ皆既月食」がライブで中継されていました。そこには赤銅色の満月を見ながら喜んでいる人々の姿が見えました。

 

夕飯を食べながら何がいけなかったんだろうと考え始めました。すると瞬間、妻のスマホのアプリが示した方向と、私がふだん東だと思っていた方角とが大きくずれていたことに気づきました。そこでベランダに飛び出て私が思っていた東の空を見上げると、そこには美しい満月がありました。月食はほぼ終わりでした。思わず妻を追及すると妻は「ごめん! スマホの位置情報の設定ができてなかったようで方角を間違えていた」と答えたのです。そうです。今回だけは自分の経験と勘が正しかったのです。しかし機械に頼ったのが間違いでした。

 

人生初の「ほぼ皆既月食」は虚しく終わりました。その夜、優しい妻は「また今度見ればいいから元気を出して」と励ましてくれました。「次は65年後だよ!」とは言えなかった私は、泣き寝入りするしかありませんでした。65年も待てるかな? もしかしたら、長生きする口実ができたかもしれません。

 

神は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。神はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。神はこれを見て、良しとされた。(創世記1:16~18)

 

在主 林 尚俊 

 

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