2022年03月13日

愛する皆さま

主の御名を心よりほめたたえます。

 

最近ロシアによるウクライナの侵略戦争によって全世界が大きな混乱に陥っています。戦禍で苦しんでいる多くのウクライナの人々の悲惨な姿は連日トップニュースになり、私たちの心を悲しませています。こういう時こそ多くの人々は神様の存在を求めていると思います。たとえ神様を信じていなくても藁にもすがる思いで祈っている人々もいるでしょう。そして私たち教会はこのような悲惨な戦争をどう見ればよいのか悩むようになります。戦争と神様の御心の関係、また神様がいるのなら、このような戦争で被害を受けている子供たちをなぜほったらかしにしているのかなど、疑問を抱くようになるかもしれません。恥ずかしい話ですが、牧師である私もそれに対する明確な答えはありません。ただ救済史的な観点から昨今の出来事を見て、その中で神様の御心を求めて祈ることしかできません。

 

そんな中、アメリカの宗教新聞である「RNS(Religion News Service)」の中に、驚くべき記事を目にしたので皆さんと分かち合いたいと思います。Knox Thamesというアメリカ国務部の幹部による報告書ですが、「Putin is after more than land — he wants the religious soul of Ukraine」、「プーチンは土地以上のものを求めている―ウクライナの宗教的な魂を望んでいる」と言う刺激的なタイトルでした。この報告書を具体的に見ますと、今回のロシアによるウクライナへの侵略戦争は、少なくとも10年以上前から緻密に計画されていたもので、その発端はロシアによる宗教統合の試みから始まったというのです。

 

本来ロシアとウクライナは、文化や宗教、また歴史においても共通点の多い国です。いわゆる自他共に認める兄弟の国関係でした。宗教的には東方正教会という宗派の教会が多くを占めていて、ギリシャ正教会やロシア正教会は私たちも聞いたことがあると思います。ウクライナでは、ロシア正教会の主教座を中心としたロシア系の正教会と、ウクライナ主教座を中心としたウクライナ系正教会に分けられていましたが、両教会はそれなりに良い関係でした。しかし10年くらい前からプーチンの命令によって両国の教会を統合しようという試みが始まったそうです。プーチンは昔のロシア帝国のような強いロシアの復活を強く求め、その第一歩としてロシア正教会の正統性を主張して周辺国の正教会への影響力を高めようとしました。そして旧ソ連時代のほとんどの共和国の教会を、ロシア正教会の傘下に置くことに成功しました。教会の統合という名目で、教会をロシアの権力拡張の手段として利用することが成功したように見えましたが、ウクライナの正教会は危機感を探知して宗教的独立を宣言し、ロシア正教会とは距離をおくようになったのです。そのため宗教的な側面から周辺国を実際的支配下に置きたいというプーチンの野望が妨げられてしまい、ウクライナの教会に対するロシアの迫害がますます激しくなったとのことです。

 

今回の戦争は表面的には物理的な戦争にしか見えませんが、深く見ると教会を利用して世の権力を得ようとする悪しき霊的な存在による霊的な戦いのようです。ですから私たち教会は、なおさらこの戦争のために切に祈っていくべきでしょう。

 

わたしたちは肉において歩んでいますが、肉に従って戦うのではありません。わたしたちの戦いの武器は肉のものではなく、神に由来する力であって要塞も破壊するに足ります。わたしたちは理屈を打ち破り、神の知識に逆らうあらゆる高慢を打ち倒し、あらゆる思惑をとりこにしてキリストに従わせ、また、あなたがたの従順が完全なものになるとき、すべての不従順を罰する用意ができています。

(コリントの信徒への手紙二 10:3 ~6)

 

在主 林 尚俊 

 

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