2022年04月10日

愛する皆さま

主の御名を心よりほめたたえます。

 

牧師館の私の部屋の机の正面の壁には、日本の有名なクリスチャンの版画家である渡辺禎雄の『エルサレム入城』という版画が飾られています。もちろん本物の版画ではなく、彼の小品集から切り取ってフレームに入れただけですが、ろばの子に乗っておられるイエス様の姿と、人々がなつめやしの枝を持ってイエス様を迎え入れる場面が描かれています。私は渡辺さんの版画が大好きで、牧師館にはこの絵以外にも、いくつかの版画が飾られています。ちょうど4月10日は棕櫚の主日なので、改めて『エルサレム入城』の絵をしばらく見つめましたが本当にいい作品です。こうは言いますが、私は全く絵に全く詳しくありません。ただ美術館に行って美しいキリスト教の宗教画や風景画、肖像画などを鑑賞するのが大好きで、たまに妻と美術館デートするくらいです。しかし残念ながらコロナで美術館に行くことすら躊躇するようになりましたので、去年、あべのハルカス美術館に行ったきりで、今年はまだ一度も美術館に足を運ぶことはできていません。最近、新しく大阪中之島美術館が開館されたニュースを見たのでそのうち行きたいと思っていますが、多くの公立施設は月曜日が休みの場合が多いので、まだ行ったことはありません。

 

そんな寂しい気持ちを慰めるために、一つのアイデアを思いつきました。ウェブ観覧です。世界中どこの美術館でも、ウェブサイトに入ってコレクションを見ることができて、いわゆるオンライン観覧を楽しめるようになっています。今週はアメリカのニューヨークにあるブルックリン美術館に行ってきました。さすがに素晴らしい作品がたくさん展示されています。そんな中で私の目と心が一気に持っていかれた作品がありました。ジェームズ・ティソというフランス人画家が描いた『What Our Lord Saw from the Cross』という宗教画です。ティソはピカソやゴッホほど有名ではないのであまり知りませんでしたが、19世紀にイギリスで活躍していた代表的な画家のひとりだそうです。

 

私が心を奪われたのは、この作品のタイトルです。「私たちの主が十字架の上で見たもの」。イエス様が十字架の上から見た風景を描いた作品です。今までにない斬新なアングルに、私はとても新鮮なショックを受けました。いつもレントや受難週になると、自分の目線から見た十字架については黙想します。しかし十字架の上でのイエス様の視線については考えたことがなかったことに気づきました。キリストは十字架の上で何をご覧になったのでしょうか。この絵を見るとさまざまな人が十字架の下からイエス様を見上げています。母マリアと女の人たち、馬に乗っているファリサイ派の人々、武器を持っているローマの兵士たち。そんな中で印象に残るのは十字架のキリストの足元で手を組んでひれ伏している人です。その人の表情から悲しさを超えた何かを感じます。もちろん画家の本当の意図は分かりません。しかし私にはそれが悔い改めのように思えました。私の姿も、そのような姿であってほしいと思いました。

 

そのとき、イエスは言われた。「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです。」人々はくじを引いて、イエスの服を分け合った。(ルカによる福音書 23 :34)

 

在主 林 尚俊

 

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