2022年06月05日

愛する皆さま

主の御名を心よりほめたたえます。

 

ずいぶん前のことですが、仕事でイタリアに行ったことがありました。出張としては1か月ほどと比較的長く、主にローマに滞在しました。おかげでその間、イタリアの首都ローマを存分に満喫することができました。その時目を引いた一つの場所があります。Bar(バール)です。イタリアのBarは日本のBarの概念と少し異なります。イタリアではカフェのことで朝5~6時からオープンしている店もあります。そしてお酒ではなくコーヒーが飲める場所です。もちろん夜はお酒を注文できる所もあります。

 

多くのイタリア人は朝仕事に行く前にバールに寄って、エスプレッソやカプチーノと、コルネットというクロワッサンのようなパンを食べます。一応出張中の私も毎朝、仕事の前にバールに寄って食べることにしました。もちろん滞在していたホテルでも立派な朝食を食べることができましたが、現地の人の気持ちを味わいたくて、ホテルからちょっとだけ離れた古くて可愛いお店に通ったのです。店に入るといつも店員さんが明るく「ボンジョルノ」とあいさつしてくれました。そしてそのうち何も言わなくてもエスプレッソ・ドッピオとコルネットを出してくれるようにまでなりました。

 

そこで私は、今まで観察していたイタリアのサラリーマンたちを真似して、まずエスプレッソのカップを手にして香りを楽しみます。次に淹れたてのエスプレッソの証拠であるクレマをこわさないように注意しながらティースプーン2杯ほど砂糖を入れます。そして2回ほど、そっとかき混ぜます。そしてゆっくりと口に運びエスプレッソの苦みを一口味わったあと、焼きたての香ばしいコルネットを一口大きくほおばります。最後にカップに残ったお砂糖をスプーンで食べるのを忘れないようにしないとツウには見えません。その店の店員さんは60歳くらいの女性でしたが、残念ながら英語ができなかったので、私が片言のイタリア語で「グラッチェ、ベラドンナ(ありがとう、美しいお姉さん!)」と言うと、いつも恥ずかしげに笑顔を返してくれました。彼女の名前は忘れましたが、短い間でも私を常連さん扱いしてくれたので、本当に嬉しかったのを覚えています。

 

このように旅と言うのは思わぬ出会いがあるからこそドキドキするものです。妻が直火式エスプレッソメーカー、モカエキスプレスでいれてくれた美味しいカフェルンゴを飲みながら、なぜか急に昔のことを思い出しました。しばらく実現できなくなった未知の地への旅が恋しくなったのかもしれません。一日も早く多くの人たちが自由に旅できるようになるといいと思いました。聖書を見ると旅の中で人生の大切な出会いを経験した人がたくさん出てきます。使徒パウロは旅の途中で「復活の主」に出会ったのです。

 

しかしバルナバは、サウロを連れて使徒たちのところへ案内し、サウロが旅の途中で主に出会い、主に語りかけられ、ダマスコでイエスの名によって大胆に宣教した次第を説明した。

(使徒言行録 9:27 )

 

在主 林 尚俊

 

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