2023年4月30日

愛する皆さま

主の御名を心よりほめたたえます。

 

男の子なら誰もが子どもの時に1回くらいは、自分のための秘密基地を作りたいと思ったことがあると思います。私も子どもの時に立派な秘密基地を持っていました。秘密基地に適した立地条件として考えられるのは、人通りが少ない山奥の茂みや建物の裏、階段の下など光が入らない暗い場所でしょう。日本の都会の子どもたちは押入れを秘密基地とする場合が多いと聞きました。しかし私の子ども時代の秘密基地はそういう所ではなく、どこよりも陽が当たる場所でありながら、人目からほぼ完璧に身を隠すことができる最高の立地でした。しかしいくつかの致命的な短所もありました。まず雨風から身を守ることができません。さらに寒さや暑さからも逃げることはほぼ不可能でした。このような致命的な短所があるにもかかわらずそこを秘密基地にしたのは、それなりの理由があったからです。とにかく限られた人以外は、そこに足を踏み入れることができませんでした。いわば秘密基地としての一番大切な条件である秘密そのものを守ることができる場所だったのです。

 

友達の中でも、場所は知っているものの入ることのできた子は多くありませんでした。そのため私の秘密基地に足を踏み入れることができた子は、一種の優越感すら持っていました。だからといって私が友達を差別して特別に仲のいい子だけを招いたわけではありません。基本的にはすべての町の子たちに基地の門は大きく開いていました。ただある能力がないとそこに入ることができなかっただけです。

 

一体どんな場所か気になるでしょう。それは近所にあった大学のグラウンドにあるスタンド席の屋根の上です。誰も登れないようにしてある屋上のような場所です。私はスタンド席の上の屋根によじ登って身を隠していたのです。普通はスタンドの屋根の上に誰かがいるなど想像すらしません。ですからそこは私にとって、どこよりも素晴らしい秘密基地でした。しかしその屋根はとても高い所にあったので、登るためには相当な勇気とスキルが必要でした。ですから選ばれた少数の友達しか登ることができなかったのです。

 

親に叱られた時や面倒なことがあった時、私はよくそこに登って姿を消しました。上から下を見下ろすと大きな鷲になったような気がしましたし、仰向けになってまぶしいほど青く染まった大空やさまざまな動物の模様に変身する雲の流れをしばらく見ていると、地上での悩みや問題はすぐに消え去りました。もちろんそんな特別な私の秘密基地は、残念ながら短いインパクトを残してなくなりました。大人にバレてしまい絶対に登れないように閉鎖されてしまったのです。今では怖くて絶対に登れないと思いますが、もう一度だけ、そのスタンド席の屋根の上から大空を見あげたいなあと思います。

 

主に望みをおく人は新たな力を得 鷲のように翼を張って上る。走っても弱ることなく、歩いても疲れない。(イザヤ書40:31)

 

在主 林 尚俊

 

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