2024年05月05日

愛する皆さま

主の御名を心よりほめたたえます。

久しぶりに音楽の話をしたいと思います。私はそんなに忙しくありませんが、最近はなかなかクラシック音楽コンサートに行けない日々を過ごしていましたので、飢え渇いているような気がしていました。ですから説教の準備の合間に、頭を冷やすためにさまざまな音楽を探して聴くことにしています。中でも教会音楽、つまり神様を賛美するために造られた曲を探して聞いています。

 

ちょうどイースターのころからオラトリオというジャンルにハマっています。日本語では、聖譚曲と訳されていますが、言葉のとおり聖書の中の物語を合唱曲で表現したクラシックの一つのジャンルです。一番有名なオラトリオ曲はヘンデルの「メサイア」で、私たち教会のみならず多くの人々に愛されている代表的なオラトリオです。この曲を含めて三大オラトリオと言われている曲は、ハイドンの「天地創造」と、メンデルスゾーンの「エリア」です。これらの曲は少しクラシックに関心のある方は聴いたことがあると思いますが、最近、私はこの三大オラトリオ以外にもよい曲がたくさんあるのを知りました。例えばバッハの「復活祭オラトリオ」やシューマンの「楽園とペリ」などです。

 

このようなさまざまなオラトリオの中で、意外な人物によって造られた曲を見つけることができました。ベートーヴェンの「オリーブ山上のキリスト」という曲です。特にその中でハレルヤ・コーラスが大のお気に入りになりました。今まで私が知っていた一番有名なハレルヤ・コーラスはヘンデルの「メサイア」にあるハレルヤですが、ベートーヴェンのハレルヤは一般的にはあまり知られていません。しかし素晴らしいと思っています。この曲が造られた背景を知ったあと、より感動したのです。皆さんもご存じのように、ベートーヴェンは天才と言われていますが、その裏には人には言えない苦しみがありました。音楽家としては致命的とも言える聴覚の障害を持っていましたから、彼の人生は個人的にも、また音楽家としても平穏なものではありませんでした。そんな彼がいよいよ完全に聴覚を失ったあと、このハレルヤ・コーラスを完成したのです。人生のどん底に陥った時にこそ、彼は落胆することなく、むしろ「ハレルヤ」と神を賛美したのです。

 

そしてこのハレルヤ・コーラスの背景になっている聖書箇所は「オリーブ山上のキリスト」を描いている箇所です。これはイエス様が十字架につけられる前に祭司長の兵士らによって逮捕される場面です。つまりヘンデルの「メサイア」にある「ハレルヤ」は復活のキリストに対する喜びを表すハレルヤで、ベートーヴェンの「ハレルヤ」はイエス様の人生で一番暗い時に対する「ハレルヤ」なのです。キリストの十字架の苦しみは私たちの永遠の命のための苦しみであるとベートーヴェンは伝えたかったのかもしれません。ベートーヴェンは苦しみの中、神様の救いを見出したことでしょう。ですからこの曲を作曲した時の彼は、実は人生で一番暗い時ではなく、一番希望に満ちていた時だったのかもしれません。

 

一同は賛美の歌をうたってから、オリーブ山へ出かけた。

(マルコによる福音書 14:26)

 

在主

林 尚俊

 

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