2024年12月1日

愛する皆さま

主の御名を心よりほめたたえます。

 

何を隠そう、私は知る人ぞ知る大の犬好きです。子供の時から何匹か犬を飼っていたこともあり、私にとってワンちゃんは身近な存在でした。前にも紹介したことがあると思いますが、一番気の合う友達がいました。そのワンちゃんは私が知っている限り一番賢く優しい子でしたので、男兄弟がいなかった私にとって、時には大親友であり、母に叱られる時には頼もしい味方でした。残念なことに若いうちに突然亡くなったので大きなショックと傷を受けて、再びワンちゃんを飼うことができなくなりました。ペットロスを癒すためには新しいペットを迎え入れるのがいいと言う人もいるかもしれませんが、私にはその時の出来事があまりにもショックで、新しくペットを飼う勇気が持てず、それから一度も家でワンちゃんを飼うことはありませんでした。

 

そんな私が森小路教会に着任してからずっと仲よくしている親しいワンちゃんの友達がいます。ゴールデンレトリバーのトニー君です。前にもここで紹介したのでご存じの方もいらっしゃると思いますが、今市千林地域ではとても有名なワンちゃんです。トニー君がお散歩をすると多くのファンに囲まれるほどです。私もそのファンの一人です。コロナによる緊急事態宣言の時にもトニー君は欠かさずお散歩をしていました。商店街を歩く人がほとんどいない時も、トニー君は毎日決まった時間にお散歩をしていたので、私にとってトニー君は砂漠のオアシスのような存在でした。道で会うといつも「僕のこと、なでなでしてね」と言わんばかりに、お尻と背中を向けて私の足の上に座り込むのです。私は気持ちよくトニー君の全身をなでなでします。トニー君のママとつい話し込んでしまってなでる手を止めると、トニー君はフッと振り向いて私を見ます。そして「手は止めなくてもいいでしょう」と言うような顔でじっと見るのです。トニー君に会えるという期待があったので、私は商店街を歩くのがとても楽しみでした。たまの日曜日、散歩の途中で教会に寄って、礼拝後に教会を出る人たちになでなでされることもありました。

 

先週の礼拝が終わった後、悲しい知らせが届きました。教会の玄関先に立って皆さんと挨拶をしていた時、トニー君のパパが悲しい表情でやってきたのです。「先生、うちのトニーが…」。瞬間、私は何が起こったか悟りました。「そうですか…。寂しくなりましたね」と声をかけると「ええ、ロウソクの火が消えるように静かに眠りました。本人も納得していたようです」と涙をこぼしながら答えてくださいました。「トニー君は、たくさんの人から愛されていたので、きっと幸せだったでしょう」。私も目を潤ませながら、そう言いました。お別れのためのお花を買いに行かれるトニー君のパパの背中が本当に寂しく見えました。

 

トニー君に最後に会ったのは亡くなる一週間前です。パパとママとお散歩するトニー君に商店街で久しぶりに会ったのです。病気だったので、ある程度お別れは覚悟していましたから最後の挨拶になるかもしれないと思い「トニー、ありがとうね」と何度も何度も何度も言いながら、いつもより長くトニー君をなでなでしました。トニー、たくさんの思い出をありがとう。

 

わたしは言おう、わたしの兄弟、友のために。

「あなたのうちに平和があるように。」

(詩編122:8)  

 

在主

林 尚俊

 

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